こころの速度
Eメールというものを初めて出したとき(まだウィンドウズもインターネットもなくて、黒い画面に緑の文字列が並ぶだけのコンピュータで、大学間のネットワークを経由して送ったのだったのだけれど)、あのときは、今書いた手紙が、ボタンひとつで、遠い外国の地にいる人に届いちゃう、ということが嬉しくてどきどきしました。
それまでは、紙の手紙を、郵便で。外国だと、場所にもよるけど、だいたい1週間くらいはかかりました。
タマネギの薄皮のように薄く透きとおる便箋を気に入っていました。ベッドに寝転んで書いて、字が曲がったり、カウチに立てひざして座って、ひざがしらに便箋をのせて書いたり。喫茶店で書いたり。ときにはちゃんと自室の机に向かって書いたりしました。
書いたけど送らなかった手紙も、ものすごくあります。
もうすこし書いてから、封筒に入れて送ろう、などと思っていると、話題がどんどん古びていって、相手の手元に届くころには、もうものすごく時差も出てしまうしで。
あとは、単純に、封筒に入れて、宛名を書いて、切手を貼って、ポストに入れる、という段階のどこかで、忙しくなってストップしてしまうとか。切手まで貼ったのに、ポストにいれそびれて、手紙の鮮度が落ちちゃった、とか。
手紙をもらって、すぐ返事を書きたくなって書いても、お互いの間にはかなりの時間が流れていて。
今メールの時代になって、やっぱりずいぶん、速いなあと。2週間待つのは当たり前、という世界ではなくなりました。
メールも、携帯電話も、すぐさま自分の元に届いてしまうことが、うれしくもあり悲しくもあり。姿をくらましたい、という欲求を、かなえにくくなりました。
小学校の校庭を、まったいらでなく、でこぼこにしたら、子供たちがすこやかに大きくなる、と誰かが言っていたのを聞いたけれど、でこぼこというのは、そこここに隠れどころができるってことかと。
自分のペースではないものごと(授業の時間割とか?)に追いたてられて、大変になったら、ちょっと姿をくらまして、ぼーっとして。こころの本来の速度を取り戻せたら、元気が出そう。。。
私的には、自分にはなにもできることはなくて、ただ待つしかない、というような状況は、実は、ぼーっとするのに最適です。
電車に長いこと乗っているときとかも、そう。
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