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2012.10.15

大地のひとびとのこと

20121008_113715 朝晩、ちょっとさむくなってきました。庭では遅咲きの白い百合が1つ咲いていたのが(写真の)、今日散りました。

9月の楽しかった「なぞの旅」について書きたいと思いつつ、あれからほんとに日々いっぱいいっぱいで……まだ書けない(涙)。今日はようやっと1日、なにも忙しくしない「お休みの日」にすることにして、たくさん昼寝をしながら、ル・クレジオという作家さんが書いた本『歌の祭り』を読みました。

中南米の先住民の土地、そこに白人がやってきたことの悲劇の歴史についてがメインでしたが…、なかなか読むのが大変な本でした(とくに、征服前の古代プレペチャ人の時代を、征服後に記録として残した『ミチョアカン報告
の翻訳部分は、とーても大変だった…)。

でも、最後の章「大洪水に抗して踊る」は、とても深い印象を残しました。70年代後半に著者がパナマの密林を旅していたときに出会ったインディオの一部族、ワウナナ族のお話。

「現代社会の余白」である密林のただなかで、外の世界と接触せずに暮らす、人口わずか数千のこの人たちは、「自分たちだけでなく、すべての人間を救うという意思と信仰をもって」、世界をおびやかす新たな大洪水をおこさないよう、もう1000年も前から、至高神エワンダマに定期的に祈りの儀礼を続けている、と書いてありました。「かれらの生き方そのままに、仰々しさも、傲岸さもなく淡々と、かれらは踊り、祈る。」

今年9月にも、ベネズエラの熱帯林に暮らすインディオ、ヤノマミ族の人たちが
鉱山業者に集団虐殺されたという報道を目にしたけれど、このワウナナの人たちは、大丈夫なんだろか…。熱帯林に伸びる工業社会の手から、この人たちが今も自由でいることを祈ります…。

スペイン征服前のかつての先住民の人たちも、今の鉱山業者と同じように征服者たちが黄金をいくらでも欲しがるので、驚いたらしかったです。先住民の人たちは黄金を「太陽の糞」と呼んでいて、それは神々にのみ差し出すもので、人間のあいだで交換するものではなかったから、そんなに黄金を欲しがるということも、この来訪者は神なのかと勘違いする一要素になったらしかった。

征服前のかつての先住民の様子の記録、興味深かったです。
たとえばスペイン人によるこの記録。


「……この世界において、われらスペイン人を除けば、かつて存在しいまも存在するもっとも強力な民族」とフェルナンド・デ・アルバ・イシュトリショチトルは書いている。かれらは……「肩までとどく長い髪で、額には前髪を垂らし」ていた。かれらの武器は弓と矢、そして領主たちは吹き矢によって狩猟をした。単婚制で、偶像をもたなかった。「かれらは太陽を父、大地を母を呼んだ」。……「これらの人々は」とイシュトリショチトルは付け加えている、「勇敢でよい政治家だ。いったことは守り、裏切らない。徳が高く、友情を大切にし、思想においても行動においても高貴だ。」

古代メキシコの人々の世界観については、こういう記述もありました。↓

アステカ人にとっては、樹木を切り倒すことさえ重大な行為であり、それを行うものは森に入るとき、「この樹をあなたの腹から切り取る」ことを許してくれるよう、ケツァルコルトルにお願いしなくてはならなかった。日常的なものの聖化は、古代メキシコの生活のすみずみまでゆきわたっていた。そこには別の時間概念、別の生のリズム、そして何より再生とむすびついた破壊という考え方が、含意されたいた。

中南米の先住民のことがメインの本なのだけれど、北アメリカ先住民、シアトル酋長が米政府に宛てた、あの有名な1854年の演説の翻訳も、含まれていました。今流布しているものは、1887年に新聞に掲載されたものの再現バージョンらしいのですが、ル・クレジオが自著に含めたバージョンは、国連食糧農業機関が発行した対飢餓世界キャンペーン広報「思想と行動」1976年6月号に掲載されたものだそうで、今まで読んだことがない部分が多くも含まれていて、とても興味深かったです。

長いけど、その全文を…。↓


われわれは、われわれの土地を買おうというあなた方の申し出を検討しよう。それを受け入れると決意するにしても、ひとつ条件がある。白人たちは、この大地に住む動物たちを、みずからの兄弟として扱わなくてはならない。

私は野蛮人であり、他の慣習など知らない。私は千頭ものバッファローが草原で朽ちていくのを見てきた。走る列車から撃った白人たちに、そのまま捨てられたものだ。私は煙を吐きながら走る鉄の馬がバッファロー以上に重要だなどということは、理解できない野蛮人なのだ。われわれは、ただ生きるためにしかバッファローを殺さない。

動物たちなくして、人間とは何なのか。すべての動物たちが消えてしまうなら、人間は心に非常なさびしさを感じ、それで死んでしまうだろう。なぜなら動物たちに起こることは、やがては人間にも起こるのだから。すべては結ばれているのだ。

あなた方は子供たちに対して、足の下の地面はわれわれの先祖の灰でできているのだということを教えなくてはならない。子供たちが大地を敬う ように、それはわれわれの人々の生命により豊かになっているのだと教えてやりなさい。われわれがわれわれの子供たちに教えていることを、あなた方の子供に も教えなさい。大地こそ母なのだ、と。大地に対して起こるすべてのことは、大地の子たちにも起こる。人間が大地にむかって唾を吐くとき、人間は自分自身にむかって唾を吐いているのだ。

われわれは知っている。大地が人間のものなのではなく、人間こそ大地のものなのだ。われわれは知っている。血がひとつの家族を結びつけているように、すべては結ばれているのだと。すべての物事は結ばれている。

大地に起こることは大地の子らにも起こる。生命の布を織ったのは人間ではなく、人間こそ布の一本の糸でしかない。布に対して人間が行うことは、自分自身に返ってくる。

だがわれわれは、私の人々に対してあなた方が指定した居住区へと行けという、あなた方の申し出を考えてみよう。われわれは離れた土地で平和 に暮らすだろう。われわれの日々の残りをどこで過ごそうが、どうでもいい。われわれの子供たちは、父親たちが敗北し屈辱を味わうのを見てきた。われわれ戦 士たちは恥を知ってきた。敗北のあと、かれらはのらくらと日々を暮らし、体を甘い食物と強い飲物で汚している。われわれが日々の残りをどこで過ごそうがど うでもいい。もはや数も多くない。さらにわずかな時がたちいくつかの冬が過ぎれば、かつてこの土地に住んだ、あるいはいまも小さな集団となって森をさま よっている偉大な部族の子らは、誰も残らないだろう。かつてはあなた方とおなじほど強くおなじほど希望にあふれていた人々の墓に泣くものは、誰も残らない だろう。だが、私の人々の終わりのためになぜ泣かなくてはならないのだろうか。部族とは人間でできている、それだけのものだ。人間はやってきては去ってゆ く、海の波のように。

神が彼とともに歩き友人のように話しかける白人にしたところで、この共通の運命をまぬかれることはできない。おそらく、何があろうと、われ われは結局は兄弟なのだろう。いずれわかる。だがわれわれは、白人がおそらくいつか発見するだろうことを、ひとつ知っている。われわれの神は同じ神なの だ。あなた方は、われわれの土地を所有したいと思うのと同じように今日、神を所有していると考えているが、むだなことだ、そんなことはできない。神はすべ ての人間の神なのであり、その憐れみは赤い人間に対しても白い人間に対しても同じようにむけられる。

大地は神の目には貴重なものであり、大地を傷つけるものはその創造者を軽蔑していることになる。白人もまたいずれは終わってゆく。それもおそらくは他の部族よりも先に。みずからの寝床を汚しつづけるがいい、するとある晩、自分自身のゴミ屑の中で窒息することになる。

けれどもその敗北の中で、あなた方は神の力によってともされた眩い光に輝くことだろう。あなた方をこの国へといざない、みずからの意図にし たがってこの大地と赤い人間を支配する権力をあなた方に与えた神の。この運命はわれわれにとっては謎だ。われわれには理解できない。すべてのバッファローが虐殺され、野生馬が飼い馴らされ、森のひそかな片隅すら人間の匂いでむせかえり、熟れて収穫を待つ丘の姿が話をする電線で台無しにされているとき。

藪はどこに行った? 消えてしまった。鷲はどこに行った? もはやいない。敏捷な仔馬や狩猟に別れを告げるとはどういうことか? それは生活をやめ、なんとか生き延びるので精一杯になることだ。

こういうわけで、われわれは、われわれの土地を買おうというあなた方の申し出を考えてみるのだ。それを受けいれるとして、それはあなた方が 約束した居住区をたしかに受けとるためだ。そこでならおそらくわれわれに残された短い日々を、われわれの欲望にしたがって生きて終えることができるだろ う。そしていつか、最後の赤い人がこの大地から姿を消し、彼の思い出が大草原の上をすべる雲の影でしかなくなったときにも、これらの川岸やこれらの森は、 私の人々の魂をかくまってくれることだろう。かれらは生まれたばかりの赤ん坊が母親の心臓の鼓動を愛するように、この大地を愛しているのだから。だからわ れわれがわれわれの土地をあなた方に売るとしたら、われわれがいつも愛してきたように土地を愛してください。われわれが世話をしてきたように土地の世話を してください。

あなた方が手に入れた時のままの姿で、この国を記憶にとどめてほしい。そして全力で、すべての思考を使って、すべての思いをこめて、土地をあなた方の子らのために維持し、神があなた方全員を愛するように土地を愛してほしい。

われわれは、このことだけは知っている。われわれとあなた方の神はおなじ神なのだ。神はこの大地を愛している。白い人も、人間に共通の運命をまぬかれることはできない。おそらくわれわれは兄弟なのだ。いまにわかる。

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