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2014.10.06

古代の手仕事と、白樺の森

20141003_105550 イギリス・ヘレフォードの森でつくってきた椅子の座面に、エルダーベリーの実で染めた紐を使ってから、染めの方向へ心が動きやすいこの頃。。。それで、そういえば、と思い出したのが、イギリスへ行く前に途中下車してたずねたフィンランドでのこと。

たまたま、フィンランドの国樹である白樺の葉っぱで染めたウールの毛糸を、糸を紡いで染めたご本人から買い求めることができたのでした。白樺の葉っぱで、こんなにきれいなグリーンが出るなんて、知らなかった。。。写真左のグリーンのが、白樺で染めたものです。右の茶色のほうは、フィンランド羊の自然のままの毛の色。

これを買ったのは、森の中で開かれていた「鉄器時代のマーケット」でした。

セウラサーリ野外博物館という、小さな島にフィンランド全土の古い家屋を移築したミュージアムに行きたくて、ヘルシンキからバスにのってでかけていくと、島の入口の橋のたもとで、古い時代の服を身に付けた女性から、「今日は鉄器時代のマーケットをやってますから、よかったらどうぞ、あちらです」と、橋のたもとを右へ、森の中へ入る道を案内されました。

なんだなんだそれは?と思いつつ、今回の旅は地元の人に突如「○○をするといいですよ」などと声をかけられた場合は、そのとおりにする、と決めていたのもあって、迷わずその道を行ってみました。

20140906_140337しばらく行くと、あらまあ、ほんとうに、中世の村の広場のようなところに出たのでした。そこには、昔ながらの木の家々や、キャンバスのテント(木を削った杭と麻ひもで設置してある)が点在していて、焚火でお茶を沸かす人、さまざまな手工芸品を売る人、買う人、中世の弦楽器を奏でている人、フィンランド式組みひもなどの手工芸をしている人、遊び回っている子どもたち、おしゃべりしている大人たち。。。その半数以上が、中世の服を身につけていました。さながら「フィンランド版明治村?」といったふう。

20140906_131939 相方と顔を見合わせ、状況を理解しようとしました。セウラサーリ博物館は、昔の建物を移築した中に、ガイドさんが昔のままの衣装をつけて、昔ながらの工芸などをやって暮らしの様子を再現している、と聞いてはいたので、ここも、セウラサーリ博物館の催しの一部なのかと最初は思いました。

でも、古代の衣装を着てこのマーケット」に集っている方々からは「職員」とか「スタッフ」の匂いがしない。しかも手工芸品を売っている人はそのうち、売り場を離れて、買い手になって他の人のテントを覗いたり、おしゃべりしたり。。。とにかくみんなとても楽しそうなのでした。お店を出している人の子供達とおぼしきちびっこらも、古代の衣装を着て思い切り走り回って遊んでいるし。。。

そうこうするうちに、なにか大きな声でアナウンス(?)らしきものがあり、古代の戦闘の装備をした人たちが広場にどしどしと入ってきて、やおらケンカ(決闘?)が始まりました。言葉はすべてフィンランド語なので、ぜんぜんわからなかったのですが、近くにいたフィンランド人に「脇によけてなね」的なことを言われ、端っこで見ていると、そのうち決闘は広場でやるにはふさわしくない、ということになったらしく、向こうの野原へ移動して、そこで改めて2つのグループが思い切りやりあう、という展開に。

あきらかにお芝居なのだけど、とても迫真に迫っている部分もあり。。。しかし戦っているさなかに、剣を振り回しながら思わず失笑したりと、どうもプロっぽくないのでした。そしてどう見ても、観客よりもやってる本人たちが一番楽しそう。。。

20140906_175910 これをやっている人たちはどういう人たちなのかなー、と謎に思いつつ、わたしもすでにむしょうに楽しくなっていて、いろんな手工芸品を売る人たちのところを順繰りにまわっていきました。驚いたことに、どの人も、自分や自分の連れ合いが手づくりしたものを売っていたのでした。

20140906_180245 昔のデザインでつくった陶器の器、木を削ってつくったスプーン、鍛冶仕事でつくったナイフや鉄のツール、糸をつむぎ染めた毛糸、毛糸で編んだ靴下や手袋、フィンランドの昔ながらの組みひも、木と毛でつくったブラシや箒などなど。。。売り買いとは関係なく、古代の服を着て広場で手仕事をやっている人もいました。

あとは小屋の中で、お菓子のようなものを、粉を混ぜるところから、昔の暮らしさながらに焚火の火で焼いて作っていたり、青空の下で鉄鍋を焚火にかけてなにか飲み物を作っていたり、まるごとの動物のお肉を炭火でグリルしていたり。。。

お店を出している人たちと少しずつ話をしていくなかで、このマーケットはある考古学者の人が主催していること、集っているのはこの時代の暮らしやあり方、考古学などに興味や関心のある一般市民であること、毎年1回この時期に開催していること、などがわかりました。

20140906_140345 自分で紡いだ糸を並べて売っていた女性のうち、おひとりは、普段は設計士としてオフィスで働いていて、糸紡ぎが趣味とのことでした。

鍛冶仕事でナイフなどをつくって売っていた男性は、「ご専門は?」と聞いたら「古代のテクノロジー」とのお答。古代の遺跡の発掘などに関わっているそうで、エストニアのタルトゥ大学でネイティブ・クラフト学部を出たと言っていたのだけど、ここは古代の手工芸を学べる場所として有名らしかった。彼によると、フィンランドの文化はエストニアの文化との親和性が高い、とのことでした。

わたしは4月にイギリスでグリーンウッドワークに触れてから、さらに北欧のブッシュクラフトへと関心が進み、フィンランドへ行ったら、フィンランドの人なら誰もが小さい頃から森で使うという「プーッコ」という小さなナイフを買いたいと思っていたので、この方ともナイフ談義に花が咲きました。。。わたしの望みのデザインを描いたらつくってくれる、というお話にもなって、うれしいかぎり。ただ、この人の鍛冶仕事の目的は、遺構で見つかった古代の鋳物を再現して作ってみて、それを実際に使ってみることを通して、古代の人がその鋳物をどんなふうに使っていたかの理解を深めることにあって。。つまり古代に迫るためのツールなのでした。自分は普通に、木工やブッシュクラフトのためのツールとしてのプーッコを求めていたので、なんだかそんな自分がつまらなく思えたりしました。。。

白樺の葉っぱで染めた毛糸を売ってくださった女性は、赤ちゃんを抱いてあやしながらだったので、あんまりゆっくり話ができなかったのだけど、今日になって少し調べてみたら、白樺の葉っぱはフィンランドでは昔から染めものに使われてきたんだそうです。

生葉でも乾燥したものでも染められるそうで、乾燥する場合は夏至祭り前に収穫すべしとのこと。ウールを染めるなら、ミョウバンなどで先楳染しておき、染液の温度を90度くらいに保ちながらゆっくり染める。元の羊の毛色がグレー系だと緑に染まり、もっと白っぽいと黄色にそまるようです。今度やってみたひ。。。

* * *

20140902_150038 しかしフィンランドの皆さんは、ほんとうに白樺と仲良しなのだな。。。幹からは家具を、こぶからはコップ(有名なククサ)を、樹皮からはバスケットや小物入れなどをつくっています。20140908_170519_2

サウナの薪も白樺だし、サウナの小屋も白樺でつくるそう。サウナに入るときは、葉っぱのついた白樺の小枝の束で体をたたくという作法もあるそです。

白樺は森の精の化身とみなされているそうで。。。そしてフィンランドの森には、ほんとうに美しく立派な白樺がたくさん!

フィンランドで最初に滞在した、ヌルビヤルビという小さな町からさらに7キロのところのおうちでも、近所(といっても徒歩片道2時間ですが)の森で、たくさん白樺を見かけました。

20140910_125841_2   ヘルシンキから北へバスで3時間くらいのタンペレという街のはずれのピスパラというエリアにも滞在したのだけれど、そこのおうちの向かいの森には、樹齢のいった太く立派な白樺もいました。

ピスパラからタンペレへはおおーきな湖の脇を、ずーっと森の中をあるけるようになっているのだけれど、そこでもやっぱり際立つのは白樺やナナカマド。

20140910_144136 20140910_150125_2 ヘルシンキからタンペレまでのバス旅の間も、車窓の風景はひたすら白樺がいっぱいの森森森、たまに湖、といったふうでしたっけ。

ヘルシンキ郊外にあるヌークシオ国立公園も、やっぱり白樺が豊富なうつくしい森でした!

20140902_140904 どこの森も白樺が美しく、ブルーベリーがそここに茂っていて、実をつけていたりして、そして食べられるポルチーニ茸や食べられないいろんなきのこがにょきにょきと生えていました。

20140902_183637_2 フィンランドでは、森などの自然のエリアが誰の所有であっても、そこに入って自由にキャンプをしたり、ベリーやきのこを摘む権利「Everyman's Rights」が万人に認められています。

もちろん、権利には責任が付いてきます。なので森でのマナーも市民のみなさんに自然に浸透しているようでした。(もちろん、キャンプをする場合は後始末をきっちりすることや、民家から少なくとも○○メートル離れていなければならない、などのきまりもあるにはあるそうですが)。小さいころから大人と一緒に森に入り、作法を見て学んでいる、というふうに見えました。

20140902_143618 実際、小さい子どもを連れて森をがしがし歩いている親御さんたちを大勢見かけました。それと9月はまだ夜9時になっても明るかったせいか、朝から晩まで、森でたくさん人に出会いました。雨の降る夕暮れどき、乳母車に赤ちゃんを乗せて森の道を散歩するお母さんもいた。。。

生活の一部に森での時間が含まれているようでした。森の道をジョギングしていて、途中で道の脇のポルチーニ茸を摘み、きのこ片手にまた走り出す、といったお姉さんもいたっけ。。。

20140909_193044 行政が、森とつながる生活を応援している部分も大きそうでした。街からすぐの森には、歩きやすい小道が整備されていることが多かったし、そういう森の中の湖には、必ず湖のほとりに、清潔な着替え小屋とトイレ、シャワーが設置されていました。

20140909_121216_3そしてたとえ道が整然としていなくて森の中で迷ってしまっても(わたしたちも実際迷いました)、森の中では遅い時間までわりとよく人に出会えて、道を尋ねられるので、不安が少ないのでした。だから私たちもだんたん、日が暮れそうになっても知らない森が怖くならなくなりました。

フィンランドの人と森のかかわりは、すごく親しげでナチュラルで、かつ礼節があって、いいな。。。森の精とのつながりが切れていない人が多い感じがします。

フィンランドの人は全般的に、物腰が静かで丁寧で、立ち居振る舞いや、ほほえみの質感は、いわゆる”西洋の人”という感じがしなかったです(今回、自分の中の“西洋の人”イメージの書き換えが起こったことも、大きかった)。それも、もしかしたら、森や湖とのつながりと関係しているんじゃないかな、と思えています。。。

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