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2015.04.03

桜その2 ~木と水のこと~

20150402_134836 桜満開。うちのおとなりさんの桜の木も、おそまきながら、花を開かせました。今はちょっと外を自転車で走るだけで、そこここで桜の花の下をくぐれて楽しい。満開の桜の下は、光を反射するからか、ひときわ明るいですね。桜の花自身も光を発しているのかな。

20150326_172837_2 桜の生木でスプーンを削ったり、桜もちをおやつに食べたり。お花を見る以外にも、桜からいただいたものがたくさんあるこの頃。

Img_9364 最近どうも精神の調子がよくないなあと感じていたら、相方が、「最近木を削ってないからだよ、1日2時間でもやるといい」と言ってくれたので、昨夜は前回の桜の枝の片割れでコーヒースクープ(コーヒー豆をすくうスプーン)をつくりました。

Img_9362 Img_9365 ただいま、スロウ乾燥中。削ったときに出た削りくずでくるんでおくと、急激な乾燥を防げて割れ防止になる、とボウル・ターナー(木の塊からろくろでお皿などを削り出す人)が言ってたので、まねしてみましたが、どうなんだろね…。

20150315_170248 今回は、桜の枝の片割れで、前回と同じような形のスプーンをつくろうと思って、削り出していったのだけど、削っていくうちに、コーヒースクープが木の中に見えてき ちゃって方向転換しました。(コーヒースクープはわがや用に欲しいな、としばらく思ってはいたのだけど。ここで出てきたので少し驚いたImg_9357)。Img_9356

スプーンの柄にしようと削り出した部分を思い切って切り落とし、逆側(作業時に押さえるために、おさじ部分の向こうにあまらせておいた木の部分)を柄にして、コーヒースクープをつくりました。

Img_9366 こういう深さのあるおさじを彫るのは、自分史上初めて。たのしかった。おさじ部分を彫り進めていったら、底の真ん中に、ハートみたいなものが出てきた!

あとは、ゆっくり乾燥させて、すこしやすりをかけて、オイルで仕上げです。

* * *

今回は、実験で、作業に入る前の桜の枝を、5日間水に浸けておいてみました。故秋岡芳夫さんの本『木のある生活』で知った、木材の「水中乾燥」の伝統が気になり中だからです。

秋岡さんは「木はそる あばれる 狂う 生きている だから 好き」と書いた額を家の壁に飾ってらしたそうですが、そうした木の個性と付き合うために、職人のみなさんは工夫を重ねてこられた、というのが木工の歴史。たとえば樹齢70年の桐を板にしたあと、倉の中で90年乾燥させてから使う、とか、家を建てるとき2階の床を二寸=6センチちかくある欅の厚板でつくって、百年後にはこの床をはずして、半分の厚さに挽いて欅の箪笥をつくる、とか、生育環境のせいで左にねじれる傾向をもった木を、右にねじれる傾向をもった木と組み合わせることで寺社などの頑丈な構造を実現するとか。「水中乾燥」というのも、そうした知恵のひとつだったらしいです。

Photo 昔の貯木場の写真を見ると、水に丸太を浮かせている。写真は昭和初期の大阪の貯木場(『目で見る大阪市の100年(下)』より)。山で伐採した丸太を、筏状にして、川をくだって運搬して、こうした貯木場に浮かべてストックする、ということが、かつては日本のいろんなところでされていました。

 

木は実は、水に強い、と秋岡さん。木は水中に沈められた状態なら、酸化も腐敗も起こさないんだそうです。大気中で湿気を帯びた状態では弱いけど、水中では強い。「木を腐らせているのは水ではなくて、菌や昆虫」だからで、こうした菌や昆虫が生息できない水中では木は強い、とのこと。

昆虫やカビが好むのは、木の中の樹液。伐採するのに適した時期(主に冬場)に伐採すると虫がつきにくく、カビもはえにくいのは、材の中の水分が少ない時期だから、といわれるけれど、この時期の材には樹液が少ないからでもあるらしい。

この樹液が、虫やカビだけでなくて、製材したあとの反り、あばれ、狂いの原因にもなるんだそうで、ものづくりをしたあとの狂いを最小におさえるために、先に樹液を抜いておく、ということを先人は考えました。

樹液は水溶性。そこで水中に沈めて貯木すれば、材の中の樹液を水と置き換えることで、樹液を抜くことができるんだそう。わたしも今回、5日間水に浸けてみたら、1日目にもう水の色がうすい麦茶のようになりました。樹液がでてきたのかな。

秋岡さんによると、吉野の杉を鉈で割って箸をつくっていた職人さんも、箸の材を水に浸けて「あくを抜いて」から作業していたそうで、仕事場の入口に水を張った桶を置いていて、その中に加工しかけの箸材をつけていたそうです。

山に暮らしてお盆やお椀をつくっていた木曽の木地師も、小川沿いに溜池をつくって、そこに材を浸けおきながら作業していたそう。

新潟と長野の県境、秋山というところでは、いろんな生活用品を木で自作自用する伝統があったそうですが、そこの集落にも、かつては家ごとに庭先に溜池が掘ってあったそう。これはトチの木の塊を水中乾燥させるためのもので、畑仕事の合間に、沈めておいた材を引き上げて、手斧とかで削り、農作業が忙しいときは削りかけのものをまた池に戻して、また「仕事を続けられる日まで幾日でも池に沈めて」おく。これを繰り返しながら、半年近くかけて、木のお鉢をつくっていたんだそうです。秋山の木鉢は、「最後の工程を除いたあとの全部を、木が濡れた状態で行います。水中乾燥と掘り加工を並行して行う伝統的な木工加工技術なのです」と秋山さんは書いていて、これはある意味、グリーンウッドワーク(生木の木工)なのだなあ、と思いました。

1024pxcapricornis_crispus_and_macac (秋山郷の木鉢については、「信州秋山郷 木鉢の民俗」という本を日本木地師学会さんが出しています、秋山の木鉢づくりの伝統を消さないために、という願いで2010年に出た本。読みたひ……。秋山郷は日本の秘境100選に入ってもいるそうで、いつか訪ねてみたいです。写真は2008年に撮影された秋山郷のニホンカモシカとニホンザル。)

指物師も、入手した板材を「雨に打たせて」から指物づくりにとりかかる伝統があったそうで、これも樹液を抜くための方法だった、と秋岡さんは書いています。

日本や世界各地のグリーンウッドワーカーで、水中貯木しながら作業している人っているのかな、と興味が湧いています。今度勇気をだして、訊いてみようかな……。とりあえず、今回の5日間水に浸けた桜のコーヒースクープがどうなるか、見て行こうと思うけれど。

* * *

イギリスに行って初めて触れたグリーンウッドワークから、毎回ブーメランみたいに、ぎゅいーんと日本の森と日本の木の文化に戻される感覚があります。日本の木の文化の伝統、すごいな、と……。

日本はフィンランド、スウェーデンについで、森林面積率が世界3位だというのも、先日初めて知りました。しかも、オークヴィレッジ代表の稲本正さんによると「生態系の豊かさでは、ダントツ1位」「様々な材がとれて、色々な活用法があって、木の文化が作られている」。

この間わたしのところにも出てきてくださった、木種をまいてこの島国をを森でいっぱいにしたという木々の神さま、五十猛神のがんばりは、なかなかすごかったんですね :)

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